高齢を理由に医療法人を後継の方に譲りたいとお考えの際に、ご家族やご親戚の方の中に適当な後継者の方がいらっしゃる場合、このような身内の方に医療法人を譲り、法人事業を継続させる方法があります。

それでは、子などの親族が医療法人を引き継ぐ場合に注意すべきことについて以下で説明いたしますので、確認してみましょう。

後継者の方が実家の医療法人を承継しようと決断しても、次のような理由によって承継が上手く行かないケースがあります。

【親族間の承継が上手く行かない場合】
(1) 高齢の理事長がなかなか引退に応じてくれない

(2) 理事長と後継者の間では承継の話がまとまっているが、後継者以外の相続人がその話を知らない
(3) 兄弟間での後継者争いなど

医療法人の承継の重要なポイントは、「高齢の理事長の交代のタイミング」「旧制度(持分あり)の医療法人の場合には、出資持分をどのように移していくか」となります。

 


 

まず、「高齢の理事長の交代のタイミング」ですが、これは現診療所に通われている患者様やスタッフ様の信頼を得られたタイミングで交代するのが良いでしょう。

患者様やスタッフ様は現院長の診療方針の下で通院や勤務されていますので、何の説明もなく交代すれば、信頼を得られずに、離れていく方もいるかもしれません。

ですので、後継者の方は、当初は勤務医という形で現院長と一緒に診療にあたるなどして、

しっかりと時間をかけて、信頼を得て院長を交代することで、様々なトラブルのリスクを最小限に抑えながら事業承継を行うことが出来るでしょう。

 


 

次に、「旧制度(持分あり)の医療法人の場合には、出資持分をどのように移していくか」です。

旧制度(平成19年3月31日以前)で設立された医療法人の定款には、次のように出資額に関して記載している場合が多いと思います。

「社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる」

これは、新制度では認められていませんが、出資持分を持っている方が退社や死亡などで社員としての資格を失った場合に、医療法人に出資持分の払戻しを請求できるということを意味しています。

医療法人は株式会社のように配当ができないので、診療所経営が10年、20年と順調に推移すればその純資産総額は設立当初に比べて相当大きくなっていることが多々あります。

その中で、出資持分を持っている方から払戻し請求をされた場合、設立当初の出資額は500万円であったとしても、20年後の現在、純資産額が20倍になっていて、1億円の払戻しを請求される可能性が出てきます。

また、別途払戻しを請求する側も相続税や贈与税の問題も考慮しなければなりません。

このような事情から出資持分の問題は非常に複雑で深刻化する危険性をはらんでいます。

 


 

これらの問題を事前に回避するためにも、理事長、後継者及びその他のご親族の方が日ごろからしっかりとコミュニケーションを図り、親族全員の協力のもと、事業承継対策に早めに取り組み、医療法人の方向性を決めておくことが、親族間の承継においては重要です。